“なんとなく”選んでいませんか？

ドラッグストアやネット通販には、無数の歯ブラシが並んでいます。
「毛先が細いもの」「ヘッドが小さいもの」「電動タイプ」など、種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない──
そんな声を患者さんからよく聞きます。

実は、歯ブラシは“自分の口に合ったもの”を選ぶことがとても大切。
合わない歯ブラシを使っていると、しっかり磨いたつもりでも汚れが残ったり、歯ぐきを傷つけてしまうこともあるのです。

今回は、歯科医の視点から“歯ブラシの正しい選び方”を分かりやすく解説します。

1. 歯ブラシ選びの基本ポイント

● ヘッド（ブラシの大きさ）

歯ブラシのヘッドが大きすぎると、奥歯や裏側まで届きにくくなります。
理想は、前歯2本分くらいの大きさ。

• 小さいヘッド → 細かい部分を丁寧に磨ける
• 大きいヘッド → 時間を短縮したい人向け

小回りがきく小さめヘッドを選ぶと、磨き残しが減りやすくおすすめです。

● 毛の硬さ

歯ブラシの毛には「かため・ふつう・やわらかめ」があります。
迷ったら**“ふつう”**からスタートしてみましょう。

• 「かため」：汚れは落としやすいが、歯ぐきを傷つけやすい
• 「やわらかめ」：歯ぐきが腫れている人・知覚過敏の人に◎
• 「ふつう」：力を入れすぎなければ汎用性が高い

歯ぐきがデリケートな方は、やわらかめを使いながら“圧をかけずに磨く”のがポイントです。

● 毛先の形状

毛先の形には「ストレート」と「テーパード（先細）」があります。

形状	特徴
ストレート毛	歯の表面をしっかり磨ける
テーパード毛	歯と歯ぐきの境目・すき間に届きやすい

歯周病予防を重視する方は、先細タイプを選ぶと良いでしょう。
ただし、強くこすると歯ぐきを傷めることがあるため、力加減には注意です。

2. 目的別のおすすめ歯ブラシ

① むし歯予防重視タイプ

歯の表面のプラークをしっかり落としたい方は、
ストレート毛×ふつうの硬さ×小さめヘッドがおすすめ。
毛先が広がりにくく、均一な力で磨けます。

② 歯周病・歯ぐきケアタイプ

歯と歯ぐきの境目をやさしく掃除できる先細毛・やわらかめが◎。
歯ぐきのマッサージ効果もあり、出血や腫れがある方にも適しています。

③ 矯正中の方

ワイヤーの下や装置のまわりには汚れが溜まりやすいため、
コンパクトヘッド＋山型カット毛の歯ブラシが便利。
加えて、**タフトブラシ（1本用の小さなブラシ）**を使うとより効果的です。

④ 知覚過敏・歯ぐきが下がっている方

刺激を避けるため、極細毛×やわらかめを選びましょう。
歯ぐきを傷つけずに、やさしく汚れを落とせます。

⑤ 子ども用歯ブラシ

成長に合わせたサイズを選ぶことが大切です。

• 乳歯期：小さくて持ちやすいグリップ
• 永久歯期：大人に近い形状で、奥まで届くヘッド

お子さんの仕上げ磨きには、ヘッドが小さく毛がやわらかいタイプを。

3. 電動歯ブラシはどう？

最近は電動歯ブラシも人気ですが、「自分の手で磨く感覚」とは少し違います。

▶ メリット

• 短時間で効率的に汚れを落とせる
• 手が疲れにくい
• 一定の圧で磨ける（モデルによる）

▶ デメリット

• 当て方を誤ると歯ぐきを傷めることがある
• 電動に頼りすぎると“磨けた気分”になりやすい

重要なのは、「歯に当てる角度」と「動かさない使い方」。
歯面に軽く当て、ゆっくり移動させるだけで十分効果があります。

4. 歯ブラシの交換時期

毛先が広がると、清掃効果は約4割も低下するといわれています。
見た目に変化がなくても、1ヶ月に1本を目安に交換しましょう。

特に「毛先が開いてきた」「ブラシに歯磨き粉が固まる」「においが気になる」場合は要交換です。

5. 歯ブラシだけでは届かない部分も

どんなに上手に歯磨きしても、歯と歯の間や奥歯の裏には届きにくい場所があります。
そのため、フロス・歯間ブラシ・洗口液を併用するのがおすすめです。

• フロス：歯と歯の隙間に最適
• 歯間ブラシ：歯ぐきが下がって隙間が広い方に
• 洗口液：仕上げに使うと口臭・菌の繁殖予防に

歯ブラシは「ベース」、その他は「補助ケア」と考えましょう。

6. 自分に合った歯ブラシを見つけるには？

歯並び・歯ぐきの状態・磨き方の癖は人によって違います。
一番の近道は、歯科医院でプロに選んでもらうことです。

定期検診やクリーニングの際に、
「どんな歯ブラシが自分に合うか」「磨き方のコツ」を聞いてみましょう。
実際に使ってもらいながら調整することで、より確実なセルフケアができます。

まとめ：歯ブラシ選びは“あなたの歯”に合わせて

歯ブラシは毎日使うもの。
たった1本を変えるだけで、むし歯や歯周病の予防効果がぐんと高まります。

• 小さめヘッドで奥まで届くもの
• 毛の硬さは「ふつう」または「やわらかめ」
• 1ヶ月ごとに交換

そして何より大切なのは、「自分の歯に合ったブラシを選ぶこと」。
迷ったら、私たち歯科医や歯科衛生士にぜひご相談ください。

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